くろめの季節 夏の風物詩
夏の盛り・・・土用の頃になると、山本英明氏の漆くろめが始まる。毎年の恒例である。
写真のように、太陽の直射熱を利用し、早朝から作業が始まる。昔は、自分が使いやすく、最も良い状態で使える漆を職人自らが調整していた。しかし、最近は漆を使う量が減ってきたせいもあるが、自分でくろめる職人さんは、まずいない。
漆の調整は全て出入りの漆屋さんの仕事となってしまった。職人さんの癖や仕事場の環境を考え、漆屋さんはきめ細かい対応をしてくれるようになった。
だが、かゆいところへは中々手が届かない。漆へのこだわりを持ち、心を込めてものづくりをする山本英明氏ならではの夏の風物詩。使いやすいように、良い仕事が出来るように、原料を調整したり、自分が使う道具を作ったりするのが職人であり、それが工員との違いかもしれない。
真夏の太陽の下もくもくと櫂(かい)を廻す。櫂と桶とがこすれる音が、心地よいリズムを奏でる。乳白色の漆が空気に触れると褐色へと変わる。じっと見ていても飽きない美しさだ。
辺りに漆の甘いというか、独特の匂いが漂う。やはりここは越前の河和田だ。漆器の産地だと実感する。
2時間ほどで一廻りが済む。ひと休みすると、今まで気づかなかったアブラゼミのジージーという鳴き声が聞こえてくる。
くろめとは?・・・漆はうるしの木から採取され、いくつかある塗工程に合わせるために精製作業を行います。精製の工程には、ろ過→なやし→くろめ、という一連の作業があります。
なやしは熱を利用せずに漆を撹拌(かくはん)するのですが、くろめは熱を利用して漆を撹拌させます。くろめとは、熱により水分を飛ばし目的に応じた漆を作る作業のことで、漆をくろめるとも言います。